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北村匡平「24フレームの映画学」感想

作品情報

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

感想

本書は、映画分析のための武器を与えてくれるような書籍であると思った。

私はこれまで、映画分析のための書籍を読んだことがなかった。写真を趣味としている関係で、どのような構図があるとか、どのような色彩を美しく感じるか。1フレーム1フレームの美しさについては、一定程度知識を有していたと思う。しかしながら、映画となるととんとわからない。構図が、動画の連なりが、音楽が、物語をどう導いていくか。あるいは、映像表現が映画にどのような影響を及ぼすのか。そのような視座を持っていなかった。

その視座を与えてくれたのが本書である。私も見たことのある有名作の数々から、映像の表現を抽出する。切り返しショット、視線、音響の問題、ショットとショットの衝突、映画に登場する物事。映画の隅から隅までが、すべて計算しつくされていると思わせるような解説だった。映画を見るのが一層楽しくなるような作品だった。映画の中に置かれた小物なり、フレームの構造から、映画を解体してやろうという意気込みで一杯になった。

というところまでは良いのだが、本書を読んで得た武器を使いこなすというところはより一層難しいと感じた。本書を読み進めたうえで、RRRを見に行った。しかしながら、RRRの息もつかせぬ展開の数々には、ゆっくり分析をしている時間など全くなかった。ジェットコースターのような映画の展開を見ながら、楽しく、唖然としつつ映画体験が終わってしまった。

おそらく、実際に武器を使いこなすためには、何度も何度も繰り返し本書を読んだうえで、自分の体に叩き込み、そのうえで繰り返し繰り返し映画を見る必要があるのだろう。映画分析の道は、これまた長そうだ。映画が何かわからなくなった際には、再度この本に立ち返って、映画を見てみようと思った。