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円城塔のおすすめ作品6選

はじめに

 僕の好きな作家である、円城塔さんのおすすめの6作品を紹介していきます。

 円城塔さんは、基本的に難しい作品が多いですが、中には分かりやすい作品や、ものすごく難解な作品があってバリエーションに富んでいます。

 今回は、様々なお好みに合わせて作品を紹介していきたいと思います。

 なお、特にお好みがないのであれば、一番下のSelf-Reference Engineを強くお勧めします。デビュー作品ながら、円城塔さんの魅力が詰まった作品です。

※本サイトの円城塔さんの感想記事はこちら。
円城塔 カテゴリーの記事一覧 - 本やら映画やらなんやらの感想置き場

円城塔のおすすめ作品6選

円城塔さんの本を初めて読むなら─「バナナ剝きには最適な日々」

 本作は、全十篇の作品集です。1作品あたり数十ページなので、割とさくっと読むことができます。

 円城塔さんの本を初めて読む方に、なぜこの作品をおすすめするのかというと、本作は読みやすいものから難しいものまで、様々にバリエーションの富んだ作品の数々が収録されているからです。

 読みやすい作品の典型が、表題作の「バナナ剝きには最適な日々」です。宇宙を駆ける無人探査機の日常が、円城塔さんらしいユーモアにあふれた独特な視点から語られています。

 これに対して、分かりにくい作品の典型が、10個目の作品である、「コルタサル・パス」です。平易な文章で語られているため、読みにくい訳ではないのですが、そこに込められた構造や、物語の舞台設定などもあって、なかなか理解することはできません。しかし、その分からなさが気持ちいい、そんな作品となっています。

※本ブログの本作のネタバレ感想はこちら
円城塔「バナナ剝きには最適の日々」─目の付け所が違う作品集 - 本やら映画やらなんやらの感想置き場

書くことについて興味があるなら─「これはペンです」

これはペンです (新潮文庫)

これはペンです (新潮文庫)

 書くことって、不思議ですよね。例えば、一度文章を書いてしばらく経った後に、その文章を見ずに完全に同じ文章を書こうとしても、それはなかなかできません。なんででしょう。

 そんな「書くこと」の不思議さを扱ったのが、「これはペンです」という作品です。

 本作品では、叔父と姪である「わたし」の手紙のやりとりを通じて物語が進んでいきます。その途中で、叔父は書くことの不思議さに関する手紙や、通常あり得ない方法で書かれた手紙を何度も「わたし」に送ってくるのです。

 そして、主人公がその手紙を読みながら、書くことや他の様々なことについて思いを巡らせていきます。

 また、本作は書き出しが非常にキャッチーです。

叔父は文字だ。文字通り。(本書9頁)

 この言葉を読んで、ビビッと来た人はぜひ本作をお読みください。

※本ブログの本作のネタバレ感想はこちら
円城塔「これはペンです」─叔父は叔父でない。文字通り。 - 本やら映画やらなんやらの感想置き場

円城塔さんの作品に慣れてきたら─「道化師の蝶」

道化師の蝶 (講談社文庫)

道化師の蝶 (講談社文庫)

 円城塔さんの作品を何作も読んできて、まだ読みたいと思っている方。その方にお勧めなのが、芥川賞を受賞した「道化師の蝶」です。

 結論から言えば、この作品は分からない作品です。おそらく、分かるように作られておらず、多様な解釈を許すような作品となっています。

 一般的に、円城塔さんの作品は、「分からないけど面白い」と評されることが多いですが、僕は本作を読んで「分からないから面白い」作品だなと思いました。

 また、本作は芥川賞を受賞した作品でもあるので、円城塔さんが好きであればとりあえず買っておいて損はないと思います。

 僕が円城塔さんの作品の中で一番好きな作品です。

※本ブログの本作のネタバレ感想はこちら
円城塔「道化師の蝶」─『分からないまま読むに限る』 - 本やら映画やらなんやらの感想置き場

道化師の蝶が好きなあなたに─「プロローグ」

 円城塔さんの道化師の蝶は、かなり複雑で解釈が難しい作品です。

 それを一歩推し進めたのが、本作品である「プロローグ」です。

 最初は読んでいてそこまで複雑という訳ではないのですが、徐々にパラグラフとパラグラフの関係性がどんどん分からなくなり、解釈が非常に難しくなっていきます。そのため、そのままさらっと読んでしまうと、何が何だか分からなくなる、そういう作品です。

 そのため、僕も初読した際には、円城塔さんの作品の中ではそれほど面白くない作品だな、と思っていました。

 しかし、再読をして本作の内容がどのように関連しているか、自分なりに考えてみた時に、この作品の懐の広さや面白さが分かってきました。

 自分で色々と考えてみるのが楽しい作品であり、読み終わった後に誰かと感想を共有したくなる作品です。

 また、円城塔さんの小説に対する考えというのも随所に感じられるので、その点でもおすすめです。

※本ブログの本作のネタバレ感想はこちら
円城塔「プロローグ」- 本やら映画やらなんやらの感想置き場

難解な作品が好きなあなたに─「エピローグ」

エピローグ (ハヤカワ文庫JA)

エピローグ (ハヤカワ文庫JA)

 円城塔さんは、難解でも/だから面白いという作品を書きますよね。そういう円城塔さんが好きなあなたにオススメなのが「エピローグ」です。

 「道化師の蝶」よりも、「プロローグ」よりも、もっと難しい作品です。一度内容を要約してみたことがあるのですが、結局要約しても何も分からなかった作品です。そのため、円城塔さんによる難解な作品が好きなあなたにオススメです。

 本作は、内容はよく分からないのですが、SF色が強く、読後はすごくわくわくして楽しかったなと思える作品でした。円城塔さんのSF作品を読みたいという方にもオススメです。

 なお、「エピローグ」は、上記の「プロローグ」と対になる作品です。だからと言って、本作品を「プロローグ」より先に読んでも大丈夫です。解説の人もそれを推していたりします。

 また、プロローグを読んだ方は、登場人物等が一部重なるところがあったりするので、とりあえず読んでおいて損はない作品です。

※本ブログの本作のネタバレ感想はこちら
円城塔「エピローグ」─想像力が、爆発する - 本やら映画やらなんやらの感想置き場

次にどの作品を読もうか迷ったら─Self-Reference Engine

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

 本作は、円城塔さんのデビュー作であり、22の短編が収められています。SFのカテゴリーに分類される作品ですが、円城塔さんの場合カテゴリーで分けてもしょうがない部分がありますので、あくまで目安です。

 この作品では、「イベント」という現象によって混乱に陥った世界が描かれます。そして、読み進めていくうちに、読者も混乱に陥っていきます。

 その混乱具合は、上記Amazonのページにある商品紹介からも一端が分かります。

彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。
老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。
そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める――

 ものすごくぶっとんでいるストーリーですよね。でも、このぶっ飛び具合が、読んでいて非常に楽しいのです。

 まだ、本作をお読みでない方は、是非是非お読みください。想像を越えたというより、想像のできない世界が広がっています。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。本記事があなたのお役に立てれば幸いです。

 また、本ブログでは円城塔さんの様々な作品について感想記事を書いているので、もしよければそちらもどうぞ。
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