本やらなんやらの感想置き場

ネタバレ感想やらなんやらを気ままに書いています。

映画「フリー・ガイ」感想

作品情報

監督: ショーン・レヴィ

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 コメディ映画のロジックにケチをつける。それがご法度であるというのは重々承知はしていてもツッコミを入れたくなってしまう。それが僕にとっての本作だった。

 NPCがそんなに簡単にプレイヤーになれるプログラムがザルすぎる/悪役がテンプレすぎる/とりあえずなんでもAIはすごい、万歳という作品の雰囲気にツッコミを入れたくなった訳ではない。ゲームのプログラムが雑すぎるといった、物語を成立するために必要な部分は多少の無理があってもしょうがないし、悪役がテンプレ通りの動きをするというのはある種のコメディのお約束ごとのようなもので特に気にならない。なんでもAIすごいねとまとめられてしまう点については、この点にツッコミを入れ始めたらコメディだけでなく様々なSF映画も観ていられなくなってしまうだろう。

 本作でツッコミを入れたくなった点の1つは、ゲームとしての世界をサーバーの再起動により更新したにもかかわらずただのキス1つで記録が復活する(というかそもそもミリー等のプレイヤーはキスできなかったのではないか)という点である。バックアップデータがあって、それをロードするという話ならまだわかるが、謎のキスによって記憶も何もかも元通りというのは、ご都合主義が過ぎるように思った。

 また、コードがパクられていた点(著作権侵害)についてはコード自体を確認して調べれば良く、わざわざゲーム内で証拠を探すという意味がよく分からなかった。また、なぜ元の世界を新しい世界に埋め込む必要があったのかという点についても、説得力のある理由づけはなされていないように思う(根本的なロジックは維持しつつ、表層の表現だけを変えるということは可能であろうし、元の世界を維持するのはリソースの無駄すぎる。)。

 加えて、気になったのが物語の終盤。サーバーの物理的な死により世界が終わるという点は分かるものの、一部のサーバーを破壊してもゲーム全体は動き続ける、ただし街は瞬間的ではなく少しずつ消えていく、というのは全くもってよく分からない。厳密性に重きを置いている作品でないことは重々承知であるものの、もう少し何かもっともらしい理由づけが欲しかったように思う。さらに、なぜバディが復活したかという点は消化不良であったように思った。

 上記以外の映画のストーリーについて言えば、金魚のように飼い慣らされていたフリー・ガイが、ミリーとの出逢いによって自我に目覚め、実存を求めるという核心部分については、良かったとは思うものの既視感のあるストーリーラインで、特別心を動かされるものではなかった。

 本作は、映像美も手伝って、見るに耐える映画になっているとは思うものの、ストーリーに関しては、もうちょっと上手な嘘をついて欲しかったというのが正直な感想である。