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村上春樹「カンガルー日和」日和

作品情報

カンガルー日和 (講談社文庫)

カンガルー日和 (講談社文庫)

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)  

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 カンガルー日和がカンガルーを見物するのにふさわしい晴れた日であるとするなら、カンガルー日和日和は一体どういう日であるのかと考えた。カンガルー日和を読むのにふさわしい日とは、どんな一日なのだろう。

 少なくとも、カンガルー日和日和が晴れた日でないことは確かだ。そんな良い日であるなら、動物園に行ってカンガルーを見るのが良い。あるいは外に出て、カンガルーを見ないのも良い。 

 だからといって、カンガルー日和日和は雨であるとも思えない。雨の日のしっとりとしてどこか暗い雰囲気は、カンガルー日和の穏やかで暖かな日差しのような物語にふさわしくない。

 雪や雷の日などはもっと違う。それらの冷たさやおそろしさは、カンガルー日和日和には一層ふさわしくない。

 思うに、カンガルー日和日和はくもりであるように思う。ずっとくもっているけれど、時たま太陽の日差しが見えるような日。暖かな日差しを待っているけれど、なかなかそれが訪れてこない日。そんな日には、カンガルー日和カンガルー日和を待ちわびる主人公の気持ちと同化できるような気がするし、主人公が過ごしたカンガルー日和を一層想像できるような気がする。

 そんなカンガルー日和日和が訪れたら、いつカンガルー日和を読み始めるかが問題だ。少なくとも、窓を開けてカンガルー日和日和であることを確認して、一通り家事をこなし終わった後に気合を入れて読むものではないとは思う。それは、カンガルー日和という物語の雰囲気に対してあまりに仰々しすぎる。

 僕が思うに、ベストのタイミングは以下のようなものだと思う。カンガルー日和日和に、家事を済ませた後出かけようとするも曇りだからとおっくうになって、家にいることを決意する。特にやることもないからしばらくごろごろする。暇を持て余し、普段はやらないような本棚の整理を始める。雑然と詰め込まれた本の数々を、作家ごとに整理していると、ふと一冊の本を見つける。いつ買ったかも覚えていない、くたびれたカンガルー日和カンガルー日和ってなんだったっけかと思いながら、その黄ばんだページをめくり、物語に引き込まれていく。

 僕の理想のカンガルー日和日和は、そんな1日だ。