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渡部昇一「知的生活の方法」感想

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

書評と感想

本書は、データや論文もなしに断言するような内容が多くあって何度も首をかしげたものの、ある程度役に立つ教訓は書かれている書籍だと思った。しかし、このような教えを現代にそのまま当てはめるのも危険であるように思う。

本書は、知的生産の方法について幅広に取り扱っている。本を読むということから、建築に睡眠、食事やビールの話まで。しかし、さしたる根拠があるわけではなく、著者のサンプル数1の体験をもとにしていたり、思い込みをもとに記載している部分があったりと、参考にならないところも多い。これは良いな、と思うことも、大抵はほかの人からの受け売りや、過去の偉人の生活をそのまま引用しているだけであって、そこまで参考にはならないなとも思った。また、時代遅れの男女差別的箇所も見受けられるところである。

しかし、ベストセラーとして長年読まれているということもあって、本書にはいくつも価値のある内容が含まれていると感じたことは事実である。例えば、精読するということ。今まで、書籍をざっと読むことが多く、同じ書籍を繰り返し読むということはあまりなかったように思う。そこで、ハムレットを繰り返し読んでみたところ、味わい深く、面白い。所見の時には気にも留めなかった表現が気になったりして、非常に面白かった。また、蔵書を増やすことの意義についても極めて明快に書いており、私は大量の本を買う免罪符を得たと思ってにやりとした。実際問題、書籍の数を増やすことで、仕事に役立ったなという場面が増えてきたように思う。これからも、蔵書については意識してそろえていくつもりだ。

ただし、当たり前の話だが、本書はインターネットが普及する前の話であり、そのまま鵜呑みにすることはよろしくないとも思う。書籍のカードを少しずつ記入するより、はなからwordでまとめて検索できるようにするなり、エクセルにまとめるなりしたほうが、よっぽど効率的であろう。また、蔵書については、大きな書斎を作る代わりに、いつでもどこでも読めて、ノートやハイライトを自由につけられる電子書籍を買うという手もある(ただし、アカウントが停止されて本が読めなくなるリスクは常々考えねばならないが。)。「デジタル時代に生きる我々が、本書をどう生かすか」という点、特に進歩著しいAIをどのように活用するかという点については、一旦本書の内容を整理したうえで、自分なりに考えてみる必要があると思った。まあ、そういう書籍を買ってしまうというのも1つの手なのだが。