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緑黄色社会「溢れた水の行方」レビュー

作品情報

レビュー

 本作は、緑黄色社会(リョクシャカ)らしいストレートな歌詞と爽やかな感じに溢れたミニアルバムだったと思います。聞いているだけで、どんどん元気になりそうな曲の数々ですね。

 それでいて、色々な雰囲気の曲が集まっていて、聞いていて楽しかったです。こんな風に様々な曲調になったのも、メンバー全員が作詞作曲を手がけたからでしょうね*1

あのころ見た光

 本曲の歌詞は素敵ですよね。言葉の数々から「あのころ」と「今」の対比がなされつつ、未来への希望が示されているところとか。

嫌いなものでも ある日好きに変わる
そんな不思議が起こるから背伸びはやめた

 この部分とか、人生の経験を経て成長した「僕ら」が、上手いこと描かれている気がします。人生を早回しでみるかのように、歌詞に時間的な奥行きがある感じがあって好きです。

 また、「誰かの光になれるかな」と悩みを見せつつ、最後に

やっと今見つけた答えを身にまとって
僕ら明日を生きてく

とストレートに希望が示されているのも良いです。前向きになれる、良い歌詞ですよね。

 ちなみに、歌詞のtwenty oneってなんのことだろうと思ったら、純粋に21歳のことを指しているらしいです*2。21歳の時に作られた曲がベースになっているのだとか*3

 曲について言えば、サビの展開が良いですよね。特に、ピアノのコード進行が緑黄色社会らしい爽やかな印象を与えてくれているような気がします。

視線

 「あのころ見た光」とはうって変わって、気だるげで落ち着いた曲調。でも、こんなしっとりした曲調にも長屋さんの声は合うんだよなあ。

 そして、この声と歌詞もマッチしているんですよね。片思いのちょっといじらしい感じ。特に、

少しだけでいい
偶然なんかじゃなくてもさ
君の瞳で僕を捉えて

という部分とか。たくさん話したい、好きになって欲しいなどといった願いではなくて、単純に視線が合うことだけを望む。真っ直ぐで、儚げで、だからこそ美しい思いですね。そしてそれを伝える長屋さんの透明感のある声。素敵ですね。

Never Coming Back

 本曲は、イントロからオルガンを多用する、格好いい曲調の曲でしたね。Autotuneを使った感じの歌がちょくちょく入っているせいか、サビの部分などは、流行りのEDMを想起させますよね。

 それにしても、長屋さん+男性のコーラスって合いますね。せっかくの男女混合バンドなので、こういう感じの曲も色々と聞いて見たいものです。

 歌詞について言えば、「なぜだか止められない ローテーション」など、ちょっと大人の感じ。止まらない恋愛というゲームにはまり込んで行く姿が眼に浮かぶようです。

サボテン

 これまたちょっと曲調が変わって、可愛らしくポップな感じ。それなのに、歌詞はちょっと重いんですよね。深すぎる愛に枯れてしまったサボテン。曲と歌詞のギャップがものすごいです。

 この曲、サボテンというのは恋か何かのメタファーになっているのかなとも思いました。

必ず無駄にはしないよ枯れたサボテン
という歌詞と、 いつかいつか私の愛の花を咲かせよう
という歌詞が対になるのも、枯れたサボテン=そんな水=愛情を必要としない人との恋を乗り越えて、幸せになるんだという気持ちに溢れているからかなと感じたので。

 実際、長屋さんもそういう気持ちで歌詞を書いていたみたいですね。

「サボテン」という曲でした。これは恋愛の歌なんですが、いわゆる水のあげすぎでサボテンを枯らせてしまったことと、愛情を注ぎすぎてうまくいかない恋愛とのオーバーラップが歌の内容だったんです。
緑黄色社会 メンバー4人の個性が溢れる多彩な楽曲が詰まったカラフルな作品に | スペシャル | EMTG MUSIC

 この曲を聞いていると、枯れた恋も無駄じゃなかったんだ。恋は何度でも繰り返せるんだというような気持ちになりますよね。

Bitter

 何故かは分からないのですが、好きなんですよね、この曲。でも、おそらく、曲も歌詞も裏表がないストレートだから好きなんでしょうね。

 曲は長屋さんの声と歌詞にフォーカスを当てるようなシンプルなもので、長屋さんの歌声が紡ぐのは近寄りたいけどなかなか近寄れない子の想い。

 こんなにストレートに気持ちを伝えられて見たいと思わせる歌詞ですね。

リトルシンガー

 このミニアルバムを締めくくるのは、ポップ・爽快なこのナンバー。サビの疾走感がたまりませんよね。シンプルなリズムから生み出されるスピード感が良いですね。

 そして、歌詞もストレート。「僕は僕のために生きて 僕を笑顔にしたい」という歌詞を聞いていると、色々なことに思い悩まずに、自分は自分のためにシンプルに生きて良いんだという気にさせてくれます。

 元気になりたい時に是非是非聞きたい一曲ですね。