本やらなんやらの感想置き場

ネタバレ感想やらなんやらを気ままに書いています。

映画「キル・ビル Vol.1」感想:カリフォルニアロールのような作品

作品情報

キル・ビル Vol.1 [DVD]

キル・ビル Vol.1 [DVD]

  • 発売日: 2004/04/16
  • メディア: DVD

監督:クエンティン・タランティーノ

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

本作は、カリフォルニアロールのような作品だった。

カリフォルニアロールを初めて見た日本人は、目を丸くするだろう。何だこの巻物は。巻物のはずなのに外側に海苔は巻かれておらず、なぜかゴマがまぶされている。挙句の果てにはアボカドすら入っている。寿司というよりもSUSHI。こんなの日本食ではない。

f:id:spaceplace:20210215003919p:plain

初めて本作を見た私の最初の反応も似たようなものだった。何だこれ。主人公が外人である時点で日本?という感じであるし、なぜか冴えない寿司職人であるところのハットリ・ハンゾウが日本刀を作っているし、途中でいきなりアニメが入るし。日本刀のバーゲンセールかと思うくらい大量にサムライソードが出てくるし、出てくるヤクザは大体小物感が半端ないし。これは日本ではなく、JAPANなんだなと納得しながら、面白おかしく見た。

普段のタランティーノの映画からバイオレンスを抽出して、そこにSUSHIとマンガとアニメを混ぜ込んでできたカリフォルニアロール。稀代の映画SUSHIシェフのタランティーノの渾身の一品だ。面白くない訳が無い。途中から笑顔が止まらなくなった。

見れば見るほど、JAPANの訳の分からなさに虜になっていく。細くて力が強いはずもないのに刺付き鉄球をぶん回すめちゃくちゃ強い女子高生。なぜか動きづらそうな着物を着ながら建物の二階から入れる雪の降る庭で真剣で斬り合う殺し屋たち。現実世界では決して存在したことのない日本だけれど、マンガやアニメではよく見るようなJAPAN。そんな賑やかさが、本作に広がっていた。中途半端に日本によせるのではない。徹底的に架空の日本を作ってやろうという意気込み、エネルギーが、本作を非常に魅力的なものとしていた。私がカリフォルニアロールと似ていると思ったのは、本作のそんな一面である。

ところで、皆さんはカリフォルニアロールを考案した人物が日本人であることをご存知だろうか。その名も、寿司職人・真下一郎。一説によれば、1960年代に彼がカリフォルニアで考案した寿司がカリフォルニアロールの発祥だそうだ*1。現地の人が嫌がるような海苔は内側に入れ、味付けにマヨネーズを用いるなどのお客さんへの細やかな気配りは、寿司からSUSHIを生み出した。そして、その味は、日本人が何度食べても食べ飽きないくらい、素晴らしいものである。私がアメリカにいた時に食べたSUSHIの中で一番好きだったのも、カリフォルニアロールだった。

寿司というコンセプトから魅力的な一部を取り出して美味しいSUSHIを生み出した寿司職人・真下一郎と、日本から魅力的な要素を抜き出してJAPANを構築した監督・タランティーノ。私の頭の中で、その姿が少し重なった。

NOBUのすし (初公開のテクニック&86レシピ)

NOBUのすし (初公開のテクニック&86レシピ)

関連記事>>>映画「パルプ・フィクション 」感想