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認知心理学による文章の説得力を簡単に上げる方法

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はじめに

 説得力のある文章を書くのは難しいですよね。時間をかけて書き方を工夫しなければ、なかなか文章の説得力を高めることはできません。また、説得力のある文章を書くためには、練習も必要です。

 しかしながら、認知心理学によれば、書いた時間や文章力にかかわらず文書の説得力を上げる方法があります。今回は、以下の書籍を参考に、それを紹介しようと思います。ノーベル経済学賞を受賞した、認知心理学者のダニエル・カーネマンが書いた、「ファスト&スロー」という本です。  

文章の説得力を簡単に上げる方法

 カーネマンは、著書の中でこう書いています。人は認知(=対象についての知識を得ることやその過程)が簡単であればあまり注意を払わず、物事を信用しやすくなります。これに対して、認知が難しければ、注意深くなると。*1

 文章で言うならば、読みやすければ、人は注意を払わず信じやすくなるということですね。そのため、読みやすい文章を書けば、人は注意を払わずに読んで、それを信じてしまうので、「説得力のある」文章ができるということです。

 突然ですがクイズです。以下の2つの文章のうち、正しいのはどちらでしょう。

織田信長は、1532年に生まれた。
織田信長は、1538年に生まれた。




 正解は、どちらでもありません。1534年です。

 これは、認知しやすい(=読みやすい)文章の方が、正しいと思われがちだということを示した実験です。これは、上記の書籍でカーネマンが紹介した実験で、ヒトラーの生まれた年について同様のことを行ったところ、最初の見やすい文章の方を正しいと考えた人が多かったそうです。*2

 このように、説得力を高めるためには、文章を読みやすくすれば良い訳です。そして、説得力を上げる文章の読みやすさとは、分かりやすい言葉を使ったりすることだけではありません。フォントやデザインなどで見やすくしても、説得力が上がる訳ですね。

 そのため、このような読みやすい文章は信頼されやすくなります。
 これに対し、衒学的等で閲読に障碍をもたらす著述は信憑性が低くなります。

 ということなので、説得力のある文章を書きたいと思った場合には、読みやすさを重視して書くと良いでしょう。

感想

 最初にこの本を読んだときは、こんな方法ありかよと思いました。でも、実際に自分で文章やパワーポイントのデザインをいじってみると、僕個人の主観ですが意外と文章の説得力が変わる気がしました。

 特に、本記事の織田信長の生誕年のクイズの部分は、自分はどちらの分も間違っていると知っている状態にも関わらず、なんとなく1つ目の文の方が正しいような気もしてくるほどでした。

 最後になりますが、先ほど紹介した「ファスト&スロー」にはこれ以外にも人間の不合理な判断について、様々なことが紹介しています。おすすめの書籍なので、皆さんぜひ一度読んでみてください。

*1:ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー(上)」110-111頁

*2:前掲書、116-117頁