作品情報
レビュー
1年7ヶ月ぶりのSHISHAMOのアルバム。本作は、想いの宝箱と言いたくなるくらい、曲ごとに様々な気持ちを歌ったアルバムだなと感じました。
以下、全曲のレビューです。
天使みたい
最初は、今までのSHISHAMOのイメージとは違った大人なナンバー。気怠げな朝を感じさせるようなゆったりとしたギターサウンドに、「可愛い君の頭を撫でた」といった単語が、成熟した男女の関係を想起させますよね。
休日、穏やかな日差し、平和な時間。愛する人と聴きたくなるような一曲です。
ひっちゃかめっちゃか
ひっちゃかめっちゃか、なぜかななぜかなノリノリになる感じがする、とってもリズミカルなラップ、なかなか聞かないこのおしゃべり。明るい気持ちを掻き立てる、そんな感じの曲かと思えば、違う、ちょっぴり切ない歌詞が盛り上げていくこの一曲。上手に行かないこんな世の中、それを表すこのソング。されども聞いた後に残るのは、ほんの少しの爽快感。
君の大事にしてるもの
新しいSHISHAMOに出会った気がしたこの一曲。初めて聞いた時から好きになりました。レスポールに嫉妬する「私」、こみ上げる若さゆえのエネルギー。ストレートに伝わってくるのは恋であり苛立ちであり、青春の一風景。破壊したレスポールに向けた「初めて目があった気がしたよ」というフレーズは、物と人とを同列に扱うスタンスと破壊衝動から、なんとなく「金閣寺」の主人公を想起させましたね。
話は変わりますが、間奏のギターも良い味出してますよね。レスポールをぶっ壊してやると言いながらも、伝わってくるのはギターへの愛。
二酸化炭素
物言えぬ二人の関係をストレートに「二酸化炭素」というワードで表したこの一曲。徐々に窒息していく関係性を、二酸化炭素という例えがうまく表していますよね。主観的な息苦しさと客観的な息苦しさって結構リンクしそうだなと思った一曲でした。「どうか永遠に目を覚さぬよう」という最後の一節から、突如背中を刺されたかのような衝撃を受けました。
忘れてやるもんか
AメロBメロは淡々とした曲ですよね。ぽつぽつと毒を吐いていく感じ。そこからの「女の子を大切にできない男なんて 全員漏れなく死ねばいいのに」というフレーズで、一気にアクセルを踏んで爆走。全てはこの部分のためにこの曲が作られたかのような、インパクト満載の曲ですね。
聞くのにふさわしい状況は少ないけれど、どこまでも深く刺さる失恋ソングですね。
ハネノバシ
忘れてやるもんかの後で、一気にガラッと雰囲気が変わるこの一曲。キラキラとした明るい歌詞、ポップなサウンド。前曲とのギャップが、そのまま今のSHISHAMOの奥深さを示しているなと感じました。休日、友達とのお出かけ前に聞くと幸せになれそうですね。
今だけは(demo.朝子宅にて)
宮崎朝子さん宅で朝4時に作られたというこのデモ音源*1。歌詞と歌と曲の組み合わせが素晴らしいですね。あなたはどうせ離れてしまうと思いながらも、「今は私だけのもの」と執着してしまう「私」。「忘れてやるもんか」と同じく、特定の誰かにそっと寄り添ってくれる一曲だと思いました。
真夜中、リビング、電気を消して。
そっとした一曲からの疾走感溢れるこの一曲。知らぬ間に恋人に変えられていたことを、別れた後にふっと気づく。その時の切なさと、なんとか前に進もうとするいじらしい思いを、うまく表していますよね。
フェイバリットボーイ
今度は恋の幸せマックスな一曲。君が「世界中のお気に入りになってしまうよ」という歌詞は、まるで初めて恋を知ったばかりの少女の呟きのよう。この曲を作ったのが「女の子を大切にできない男なんて 全員漏れなく死ねばいいのに」という歌詞を書いた人間と同一とはとても思えません。
キスをちょうだい
キスを「幸せの交換」と言うあたりファンシーですよね。軽快さを感じさせるギターサウンドであるにもかかわらず、「私はこれから先死ぬまで あなたとだけだよ」というフレーズが突然飛び出すあたり、恋する少女の純真な重さを感じさせますね。
またね
今度はまた失恋の歌。「いつか別れたことを後悔させてあげる」というフレーズを展開したら、自動的にこの歌詞ができるのではないかと思うくらい自然な一曲です。
最後まで聞いて頭に浮かんだのは、「分かる」の三文字。思い出す、過去。
君の隣にいたいから
NHK全国学校音楽コンクール中学校の部の課題曲だというこの一曲*2。直球ど真ん中の良い曲ですね。未来溢れる中学生にぴったりな優しい曲だなと思いました。この曲を歌いながら、「自分の空を探すよ」と力強い気持ちを抱いてもらいたいですね。
曇り夜空は雨の予報
宮崎朝子さんのハイキーがとても美しいこの一曲。「君は星の見えない曇り夜空見上げて」という一節が、どうにもうまく行かない二人の関係を暗示しているようで切なくなります。未来の話ばっかりする「君」と、明日がどうでもよくなった「私」。二人が交差するのは、きっと今この瞬間だけ。
それでも、「君に恋をしたあの瞬間きっと本当の私を見つけたの これだけがただ、真実なの」と言い切れる力強さが、本曲を救ってくれるように思います。
※宮崎朝子さんによる楽曲解説がありました。 SHISHAMO史上最も自然で最も自由な最新作『SHISHAMO 6』を宮崎朝子が語る | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス