本やらなんやらの感想置き場

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宇宙法を扱う就職先をざっと考えてみる

はじめに

 宇宙法に興味を持って勉強していくと気になるのが、勉強した宇宙法を活かせる職業はあるのかということ。この点について、本記事では考えてみたいと思います。

 また、せっかくなので民法などの国内法一般と宇宙開発の両方を扱う職業についても考察します。

 なお、本記事は宇宙法を扱う職業を網羅しているものではなく、筆者が思い付く限りの職業を挙げていることに留まることに留意してください。

大学教授

 宇宙法を扱う職業として真っ先に考えられるのが大学教授ですよね。実際、国際宇宙法、国内宇宙法の各分野で宇宙法を専門とする研究者の方々がいます。

 ただ、宇宙法を扱えるであろう大学教員のポストが多くないことについては留意する必要があります。例えば、国際宇宙公法の分野で大学教員になりたいと思った場合、国際宇宙公法は国際法の一分野である以上、国際法の分野で大学教員となることを目指すことになるでしょう。

 そこで、JREC-IN Portalという「研究に関する職を希望する求職者の情報と、産学官の研究・教育に関する求人公募情報をそれぞれ収集・データベース化して、インターネットを通じて求職者、求人機関双方がそれぞれのニーズに応じた内容を検索・閲覧頂くことが可能」*1なウェブサイトで国際法の大学教員の求人を探すと、2019年1月現在で1件しかありません。あくまでこのサイトで見つかる求人の数とはいえ、国際法全体の求人で1件です。

 このような求人の件数だけから考えても、宇宙法の研究者を目指す道が険しいものであることに間違いはありません。 

JAXA職員

 宇宙法を扱うという点で、JAXA職員もすぐに思いつきますよね。

 法務担当になれば、「事業活動が法的に正しいかどうかを判断する役割」を担います。具体的には、外部との各種協定を締結する、社内規程を制定・改正するといったシーンで法的業務に幅広く携わ」ることになります。 *2 また、調査国際部に配属されれば、「国際会議の企画立案及び手配準備・運営、各国大使館の科学担当へのPR活動、国際協定に関する文書の作成などを担」うことになります。*3

 ただし、2019年度のJAXAの文系の採用人数は大卒で7名、修士で1名であり、狭き門です。*4

 加えて、配属や人事異動の関係で、必ずしもずっと宇宙法に携わることができる訳でもないことにも注意が必要ですね。

官僚

 内閣府には宇宙開発戦略本部が存在し、宇宙活動法や衛星リモセン法に基づく許認可等、宇宙法に関する様々な業務を行なっています。

 また、外務省でも、国際宇宙法に関わる様々な業務を行なっています*5

 ただ、そもそも官僚になるためには、難しい国家総合職試験を突破した上で、官庁訪問をくぐり抜けて内定を得る必要があります。平成30年度に置ける国家総合職試験の大卒の法律区分の合格率は、5パーセント以下です。*6

 内閣府の大卒(法律)区分の採用者数は、平成30年で4人です。*7また、外務省の大卒(法律)区分の採用者数は、平成26年度で14人です。*8

 また、内閣府も外務省も、配属や人事異動の関係で宇宙法に携われるとは限りません。

国連

 相当ハードルが高い部類に入りますが、国連で宇宙法に関する仕事を行うという道がない訳ではありません。例えば、第一線の宇宙法研究者としても活躍されている青木節子教授は、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)法律小委員会におい て、日本人として初めて議長を務められました*9

 また、奥村由季子さんは、国連宇宙部(UNOOSA)で宇宙法務の仕事をされています。宇宙法務の仕事を始めるまでの道のりは、こちらに詳しく記載されています。

弁護士

 宇宙関連企業が活動する上でも、国内宇宙法を含む宇宙法や民法等が関わってきます。そこで登場するのが弁護士です。現に、宇宙を専門分野とする弁護士は存在しますし、第一東京弁護士会には宇宙法研究部会というものが存在します。

 弁護士と宇宙法の関わりについては、宇宙法研究部会が公開している資料をお読みになるのが良いでしょう。同資料によれば、「民間宇宙活動に関しては損害保険や国家補償に加え、取引契約における責任規定や損害発生の場合の訴訟対応などによる適切な責任配分が極めて重要であり、その意味でも、弁護士が果たすべき役割が極めて大きなものとなってい」るそうです。

 このような宇宙法研究部会の考えが気になる方は、同会が編集した「これだけは知っておきたい!弁護士による宇宙ビジネスガイド」を読んでみるのも一つの手かと思います。

 ただし、弁護士になるためには、原則として法科大学院を卒業した上で、受験者の3割弱しか合格できない司法試験を突破しなければなりません。*10

 また、弁護士になれたとしても、弁護士の数がかなり増えてきているため、弁護士自体が徐々に収入を得にくい職業となっています。*11また、実際に宇宙法や宇宙開発が関わる案件がどれくらいあるのかは不透明ですし、弁護士としてそのようなを獲得できるとも限りません。

宇宙関連企業

 様々な宇宙関連企業は、当然会社として活動している訳ですから、会社法・民法・商法などの法律を扱うことになります。

 宇宙開発に関連する企業は様々なものがあります。ロケットや衛星の製造企業だけではなく、衛星によるサービスを提供する会社や宇宙保険を提供する会社など、数えきれないほど多様な会社が存在します。詳しくは下記の記事を参照すると良いでしょう。

sorabatake.jp 

 ただ、会社に就職してもそのような法に携わる部署に配属されるとは限らないことに注意が必要です。

シンクタンク

 シンクタンクで宇宙法について取り扱っている会社もあるようです。

終わりに

 宇宙法や、宇宙開発と国内法一般を取り扱う職業は様々ありますが、そのような法を扱う職業・部署で働けるかはかなり不透明です。しかし、他の分野であっても、100%自分の望む職業に就けるかどうかは不明確な場合が多いでしょう。

 そういう意味では、宇宙法を扱う職業に就くのは大変だと諦めるのではなく、そのような職業を目指すリスクを踏まえた上で絶えず情報収集を繰り返して、自分の望む職業に就けるよう一歩一歩諦めずに努力するのが大事なのでしょうね。

※当ブログには、軽く宇宙法について説明している記事があるので、よければこちらもどうぞ。また、国際宇宙法の調べ方の一例についてはこちら