本やらなんやらの感想置き場

ネタバレ感想やらなんやらを気ままに書いています。

ピーター・スワンソン「だからダスティンは死んだ 」感想:これはミステリなのか?

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

本作は、サスペンスとして非常にドキドキする作品だった。ヘンとマシューが交互に切り替わることで、普通は描かれない犯人側の視点と探偵側の視点が交錯する。そして、ヘンが探偵としてマシューを追い詰める物語なのかと思いきや、マシューはヘンの目の前で人を殺し始めて予想が裏切られ、ヘンが躁鬱病を患っていることもあってヘンの告発を誰も信じないというところで、私の頭がホワイトアウトする。そこから始まるヘンとマシューの奇妙な関係。そこからさらにリチャードも出てきて物語は混迷を極めていき、ページをめくるスピードもどんどんと加速していった。先の展開が読めないはらはらとする作品で、サスペンス小説の醍醐味を味わったように思う。

ただ、本作で割と?が浮かんだ点も多かった。そもそも、(作者のせいでは1ミリもないが) 〈このミステリーがすごい!〉海外編第2位ということを念頭に、本作を買って読み始めた。そのため、最初はダスティン殺しを行ったのが誰か(フーダニット)の話なのかと思えば、すぐに犯人が明らかになる。次に、ダスティン殺しの方法についての話かと思えば、そこにフォーカスが当たるわけでもない。また、タイトルで「だからダスティンは死んだ」と書かれており、ダスティン殺しの理由についてのミステリなのかと思えば、ダスティン殺しの理由も本編で明らかにされる。これの、どの辺がミステリーだったのか、いまいち分からなかった。

加えて、本作の大きな謎であるマシューとリチャードの関係についても、完全にメタ的な読み方にはなってしまっているものの、リチャードが出てくるシーンは基本的にマシューがいる時しかないということから、なんとなく、マシューとリチャードは同一人物なのではないかということが読めてしまった。そういった意味で、あまりミステリ的な面白さはなかったように思われ、少し拍子抜けしてしまった。

ただし、逆にミステリーだと思って読んだからこそ、次々と私の予想が裏切られ、楽しく読めたというのも事実である。結局これはミステリなのかサスペンスなのかなんなのかを論じるまでもなく、自然体で楽しむのが良い作品なのだろう。そういう意味で、本作は先行きの読めない刺激的な面白い作品だった。

関連記事>>>アガサ・クリスティー「カーテン」感想 - 本やらなんやらの感想置き場