本やらなんやらの感想置き場

ネタバレ感想やらなんやらを気ままに書いています。

映画「THE GUILTY ギルティ」感想

作品情報

THE GUILTY ギルティ[Blu-ray]

THE GUILTY ギルティ[Blu-ray]

  • ヤコブ・セーダーグレン
Amazon

監督:アントワーン・フークア

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

本作は、ただひたすら緊急通報指令室で物語が進行していくという点で、興味深い発想であるとともに、主演のアスガーを演じる俳優の演技力に唸らされた作品でした。また、作品のテーマ的に、昔の「米で通報番号911に「ピザの注文」オペレーターがSOSに気づく」というニュースを思い出して、オペレータがいかに機転を聞かせて暴力を振るう男から女性をうまく救い出すかという話かと思えば、むしろ逆に女性側が犯人で男がそれを救おうとしていたという、予想を裏切る展開も面白かったです。

加えて、主人公が緊急通報指令室のオペレーターとしての権限を越え、法を乗り越えて罪を犯していく(相棒に飲酒運転の教唆をしたり、犯人と思しきミゲルの家に不法侵入させるなど。)のと同時に、どんどんアスガーが暗い場所に籠っていく(緊急通報指令室の奥に行く)ようになるという演出も良かったと思います。本作の中盤で、イーベンこそがオリバーの殺人の犯人であることに気づき、自分の犯した様々な過ちに気づいたアスガーは、自分の犯した罪を自覚して相棒にもはや嘘をつく必要はないと改悟し、緊急通報指令室の奥(ダークサイド)から明るいエリアに戻ってくることができました。そして、アスガーは、周りに人がいる状況でイーベンに自らの犯した罪を告白してその命を救うことで、自らの罪に向き合う覚悟を固め、外の世界(正しい世界)に戻っていくことができたのではないかと思います。ラストシーンの電話の相手が誰かという点は不明ですが、おそらく自分の殺人の罪を認めるということを誰かに伝えようとしていたのではないかと思います。

物語の二転三転具合やこういった演出は面白かったのですが、本作は「罪」というテーマへの踏み込みが中途半端であったような気がしました。本作において、強引な捜査でミゲルを追い詰めたところ、真犯人はイーベンだったという、一から十まで自分のした行為が全て裏目に出る経験はしているものの、なぜアスガーが自らの罪を認めようと思い立ったのかという点についてはいまいちはっきりしません(どこに「蛇」がいたのでしょうか。)。精神的ショックを受けて、被害者救済の名の下に早とちりしがちな自分を冷静に見つめ直したということなのかもしれませんが、十分な説明とまでは言えないように思います。このように、物語の中核である「罪の認識」という部分がボヤッとしているように思われるため、本作そのものも伝えたいものがぼやけてしまっているという印象を受けてしまいました。本作は、普通の映画と評価せざるを得ないような作品だったと思います。

その他の当ブログの映画の記事はこちら:
映画 カテゴリーの記事一覧 - 本やらなんやらの感想置き場