作品情報
評価
☆☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)
レビュー
本書は、行政法の大家であり、宇宙二法の立案審議に参加した宇賀教授による、宇宙二法の逐条解説です。この宇宙二法とは、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)、及び、衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(衛星リモセン法)を指します。
本書は、宇宙二法の条文の立法趣旨や解釈、宇宙二法の施行規則の説明が掲載されており、これら二法を扱う実務家や研究者にとっては必読書かと思います。本書は、非常に明確かつ詳細に各条文の解説がなされており、書籍として非常に質の高いものとなっています。
そんな素晴らしい本書ですが、買うに当たってはいくつか注意すべき点があります。
注意点
宇宙二法の全体像を把握しづらい
本書は、あくまで宇宙二法の逐条解説(コンメンタール)です。そのため、宇宙二法の全体像を把握するために読むのではなく、不明な条文の内容を明らかにするために参照するのが本来の使い方かと思われます。
そのため、これから宇宙二法を勉強したいと考えている方であれば、先に他の書籍や政府のホームページを読んで全体像を抑えた上で、本書を読むと理解が捗ると思われます。例えば、以下の書籍を読むと良いでしょう。
内容が専門的である
本書は、各条項の解釈等を説明しているものであり、その内容は詳細です。そのため、広く浅く宇宙二法を知りたいという人には向いていないと考えられます。本書を買う前に、自分が各条文の細かい解釈を知る必要があるかどうか検討した上で、本書を検討すると良いでしょう。
また、読者が国内法の知識を一定程度有することを前提とした書籍であると考えられるため、読む際には国内法の知識がある程度必要となります。
特に、行政法の知識は必須です。そのため、事前になんらかの行政法の基本書を読むか、少なくとも手元に置いて読むのが良いでしょう。行政法の基本書について言えば、同書は宇賀教授の行政法概説を引用しているので、同書も購入するのも良いでしょう。こちらも非常に質の高い行政法の教科書です。
技術的要素については他の書籍を参考にする
当たり前ですが、あくまで本書は法学書です。本書では、宇宙二法の立法の背景となった技術的知識についても一部補足されていますが、その内容は簡潔であるため、そのような知識を有していない方は別途他の書籍で勉強する必要があります。
全くそれらの技術的知識を学んだことがないという方であれば、手始めとして以下の書籍を読むと良いかもしれません。
まとめ
本書は、宇宙二法を扱う実務家や研究者にとっては必読書であると思います。しかし、これから宇宙二法の勉強を始めてみたいという人にとっては、専門的すぎる内容の可能性があります。
本書を買う上では、宇宙二法の逐条解説が本当に必要なのかを自問した上で、購入する決断をする必要があると思います。なお、宇宙二法についての知的好奇心は本書によってかなり満たされますので、本書の購入を迷っていて本書を購入するお金の余裕がある人であれば、買ってみるのも手かと思います。全てを理解できるかどうかは別として、本書が有している情報自体は非常に価値があるものですので。