作品情報
- 作者: 新川直司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/12/07
- メディア: Kindle版
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評価
☆☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)
※以下は全巻のネタバレを含むので、注意してください。
ネタバレ感想
本作は、最後まで読んで、思わず涙してしまうような美しい物語でした。あまりに素敵なお話だったので、全巻読んだ後にそのまま最初から読み直しました。そこで、今回は全巻の内容を踏まえた上で、公生とかをりの関係を中心に、2巻の感想を書いていきたいと思います。
演奏前、かをりは公生に対して「私を見て」と訴えかけます。立ち直るきっかけをくれた、このかをりを、後々まで公生はずっと思い出し続けるんでしょうね。本作が終わった後も、ずっと。
演奏会の途中で、公生は弾くのを辞めてしまいます。そこでかをりが駆り立てる、「アゲイン」という言葉で。「じゃああのコは、何のために弾くの?」と観客が問いかけます。(70頁)これは、演奏家として観客の心に残るため、というのも一部あったかとは思います。公生と演奏できて嬉しい、というのもあったかと思います。でも、それらよりも、公生に自らの想いを伝えたかったんでしょうね。自分が憧れた小さい頃の公生に戻って欲しいとの。
演奏後のかをりの呟き。「私 忘れない 死んでも忘れない」という言葉(141頁)。かをりが自らの死を予期していたことを踏まえると、その言葉に一層の重みが増します。公生と観客の心に残る演奏をする。かをりの積年の夢が叶った瞬間でした。
かをりがけんけんぱをして公生を待っていたシーン(175頁)。人を待っていると近くの子供にバラされて照れている姿が可愛らしいですよね。そして、ピアノコンクールに出てと、公生をまた音楽の道に引き戻そうとします。
このシーンで、再度「嘘」が登場します。
「やってられるか」「お前が弾け」って!!
それでもまた拾い上げて 楽譜に向かう
そうやってもっとも美しい嘘が生まれる
この「嘘」も、「4月の君の嘘」の一つなんでしょうね。「君」=公生のもうピアノの演奏はしないとの決断。かをりとの出会いによって、公生は再びピアノと向かい合いはじめ、その決断が「もっとも美しい嘘」になっていく様が、本作で語られていくことになります。
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