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新川直司「四月は君の嘘」第3巻感想:公生の中に息づいて行くかをり

作品情報

 なお、本作はアニメ化映画化されました。

評価

☆☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)
※以下は全巻のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作は、最後まで読んで、思わず涙してしまうような美しい物語でした。あまりに素敵なお話だったので、全巻読んだ後にそのまま最初から読み直しました。そこで、今回は全巻の内容を踏まえた上で、公生とかをりの関係を中心に、3巻の感想を書いていきたいと思います。

 毎報新聞社主催のコンクールに向けて、物語は加速していきます。「本当の君はショパンをどう弾きたい?」コンクールのためだけに正確無比な演奏をしていた公生に対して、それと真逆の演奏家のかをりはそう問いかけます。

 公生が音楽室でかをりにピアノを聞かせているシーン(27頁)。公生のピアノを聴いている時は嬉しそうで、公生がピアノを中断して自分に上着を被せている時にはムッとするあたり、かをりは公生のピアノが本当に好きなんでしょうね。

 夜の音楽室でかをりが公生に私を恨んでいると聞くシーン(38頁)。かをりが単純で明るくて前向きな女の子ではなくて、凄く繊細な子だと分かる場面ですよね。「だから ありがとう 僕の体に積もったホコリを払ってくれて」と答えるあたり、公生はその場その場で、かをりを支えてあげるような素敵な返答をするんですよね。だからこそ、かをりも公生を支え続けることができたのでしょう。

ありがとう 僕と出会ってくれてーあの日から 僕の世界は鍵盤さえ カラフルになっていたんだ

 本作の台詞の中でも、トップクラスに好きな言葉です。かをりとの出会いが、いかに公生に影響を与えていたか。白黒な鍵盤さえカラフルになるという言葉が、本当に素敵です。

 公生が椿をおんぶするシーン(90頁)。自分も公生と居たかっただろうに、「1人で椿ちゃんのところ行け」と言って、かをりは自分の心を抑えて一歩引きます。いくら公生と一緒に居たところで自分は椿には勝てないと、かをりが思い知っているのがわかって辛くなるシーンです。

 夜の公園で、かをりが公生に伝えるシーン(133頁)。「ありったけの君で 真摯に弾けばいいんだよ」。今後も、公生の中に残り続けるかをりの言葉の1つです。二人で一緒にいる時間。どんどん、かをりが公生の中に息づいて行くのが分かります。

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