作品情報
※本作は、2020年の8月5日に発売される「朗らかな皮膚とて不服」に収録されます。
- アーティスト:ずっと真夜中でいいのに。
- 発売日: 2020/08/05
- メディア: CD
レビュー
本曲を初めて聞いた瞬間に、ずっと真夜中でいいのに。の曲の中で一番好きかもしれないと思った。
今まで、ずっと真夜中でいいのに。の最大の魅力は、力強いボーカルのACAねさんとハイクオリティなバックバンドの組み合わせにあると思っていた。周りを突き刺すような歌声。聞いていてビリっとするような、とめどない勢いの曲の数々は、どんどん頭のお気に入り箱にタグ付けされて吸い込まれていった。
本曲は、そんなずっと真夜中でいいのに。の曲の数々と少し違っている。サビの部分であっても、力強く高音が連打される訳ではなく、心地よくメロディが続いていく。今までのお気に入りの曲の数々が力強さで背筋をピリッとさせるような曲だとすれば、本曲は名人がこともなげに難しい技をやってのける様を思い起こさせる。普通の人ならまともに歌うことすら困難であろうパートでさえも、すらすらと。
この歌声は、繰り返し繰り返されるリズミカルな歌詞と合わさって、一層の魅力を解き放っている。ずっと真夜中でいいのに。の歌詞は、容易に意味が掴めず=解釈の幅が広く、通常なら使われないファンキーな言葉が多く使われている。それが、本曲のような繰り返し繰り返される単語の数々と出会った時、こんなにも身体揺さぶられる曲になるだなんて、思ってもみなかった。「焼き焼きだ」「乾かないや」「ヤンキーヤンキーだ」「解いといてよ」。反復を効果的に使ったこの歌詞は、ずっと真夜中でいいのに。感を増し増しにしながら、はっきりとは意味が分からないけれど、前向きにさせてくれるようなワールドを作り出している。
歌声でリズムを刻み、刻まれ。この歌声と、スラップバリバリのかっこいいベース、ダンスミュージックを思わせるかのようなヤンキーなドラムと合わさって、ただただ、気持ち良い。あと忘れちゃいけないのがピアノとストリングスとギター。要するに全部。その全てが、ずっと真夜中でいいのに。という雰囲気を100パーセント醸し出していて、ずっと真夜中でいいのに。だけれどずっと真夜中でいいのに。の完全上位互換であるかのような1曲だった。
音楽は理屈じゃないんだな、感じるものなんだなということを、再確認させるような一曲だった。