はじめに
近年、なろう系小説が空前の人気になっていますよね。主人公が突然異世界に放り込まれる感じの小説です。なろう系小説は、様々なジャンルがあるのですが、その中には日本の法律をテーマにしたものがあるんです。
そこで、今回は、法律をテーマにしたなろう系小説を3つレビューしていきたいと思います。
とりあえず一作品読んでみたいのであれば、最初の「法律が力となる!コミュ障弁護士の異世界判決録」を読んでみると良いでしょう。区切りの良いところで話が終わっているので。(ただし未完)
なお、以下で挙げている作品は全て未完の作品です。ご了承ください。
法律が力となる!コミュ障弁護士の異世界判決録
作品情報
著者:窓際ななみ 労働法監修・解説:曽利和彦(特定社会保険労務士)
作品はこちらでご覧になれます。
現在、2巻まで公開されており、連載中です。
あらすじ
新米弁護士の畑楽法子(はたらくのりこ)は、コミュ障のダメダメ弁護士だった。
そんな駄目駄目な弁護士生活が続く中、彼女は繁華街で謎の人物と出会う。
謎の人物に連れられて辿り着いた先は、現世界の法律が【力】になる、異世界だった。
彼女はその法律の【力】を使って、異世界の様々なトラブルを裁く異世界弁護士となる!
レビュー
最初に紹介するのは、「法律が力となる!コミュ障弁護士の異世界判決録」です。本作は、異世界法律系なろう小説の王道を歩んでいると僕が勝手に思っている作品です。
主人公は、新人弁護士の畑楽法子。畑楽法子は、異世界なろう小説にありがちなトラックや召喚による転生をするのではなく、普通にとあるビルの一室から異世界に行き来します。その異世界で、主人公は日本の法律を駆使し、仲裁によってトラブルを解決していくのです。
いや、なんで異世界で日本の法律を適用できるのかと思ったあなた、そこがポイントです。異世界法律系なろう小説は、大抵日本法がベースとなっており、作品によってさまざまな理由づけが試みられているのです。
本作の異世界には7つの国が存在し、それぞれ国内法が存在するため、普通ならば日本法は適用できません。当たり前ですね。
しかし、主人公はその7国の王が認めた者だけが使用できる宝具によって、日本法に基づく仲裁をすることができます。要は、水戸黄門の印籠みたいなものを見せて、強制的に日本法で仲裁するって感じですね。この世界の法の支配はどうなっているんでしょう。
法の支配はさておき、いくら宝具があるからといっても、現地の法を無視した仲裁なんて当事者が納得しないだろうと思う方もいるかもしれません。ですが、著者は、そのような反論を予期していたのか、作中できちんと説明しています。
いきなり別世界の法律で強制的に裁くといわれても、納得できる者は少ないだろう。(中略)
「この世界の7人の国王からは、裁きにはこの世界の理も尊重して欲しいと言われています。」 (中略) 「この世界の理、つまり己の力で未来を掴み取るということです!」(中略)
「ただの魔物ではありません。異世界の法律と貴方達が主張している内容、それらを照らし合わせ内容がかけ離れていればいるほど、強い魔物が出現します。」
「魔物と戦わない、もしくは敗れた場合は、異世界の法律もしくは相手の主張に従って頂きます。」
「しかし……もし魔物を見事討伐できた場合は、その主張を今回の判決として認めたいと思います。」
はい。なぜか戦います。それなら、最初から戦えば良いように思えますが、なんでこんなシステムを使っているんでしょう。良く分かりませんね。
このような、戦いの勝敗と日本法による仲裁の勝敗が直結する謎システムですが、当事者は反抗することなくあっさり判決に従います。この異世界の住人は、非常に素直ですね。
なお、本作の巻末では、突然日本法の解説が入ります。珍しいですね。
法律初心者の異世界奮闘記
作品情報
作者:T.N
作品はこちらでご覧になれます。
なお、本作は連載中です。
あらすじ
法科大学院生である債譲権(23歳)は、院生1年目を終えたばかりの法律初心者である。そんな法律初心者が、ひょんなことから異世界に召喚され、理不尽な無理難題を今まで培った法律の知識で解決していくことに・・・。
レビュー
次に紹介するのが、「法律初心者の異世界奮闘記」です。
主人公の債譲権は、普通の法科大学院生。突如ベットで寝ている間に異世界に召喚されます。そして、元の世界に帰るために、召喚された国の法の編纂に携わることになるのです。
いや、普通の法科大学院生が法の編纂なんてできないだろうと思う方もいるかもしれませんが、主人公はなぜかスマートフォンとともに異世界に召喚されたため、その中の日本法のデータを基に法の編纂を行う、というストーリーになっています。やっぱり、スマートフォンって便利ですね。
本作の特徴は、やたらと法科大学院生の実情が織り込まれているところですね。
債譲さいじょう 権けん、23歳。「ニッポン」という国の、私立早慶大学法科大学院に通って法律を勉強している。早慶大学法学部出身。法律家になるため、と法科大学院に通うことに決め、3年コース、いわゆる未修者コースを選択し、現在2年目を迎えようとしているのだが・・・。
法科大学院生、特に未修者コースという名前を出してくるあたり、相当設定が細かいです。
法学部生でもたまに忘れる者が現れるが、基本事項なので、この定義を省くと結構ひどい成績がつけられてしまう。俗にいうGPA的に言うとヘタすれば0、よくて2と言ったところだろうか。3や4は絶望的であろう。と言った法学部生事情はさておき、債譲は話を続ける。
このGPAの話も、やたらと詳細です。おそらく、作者は法科大学院生又はその卒業生なのでしょう。
他のなろう系小説の例にもれず、本作では、かわいい女の子が突然出てきて突然主人公を好きになったりします。また、ボリュームも十分にある作品です。
そんな本作ですが、1つだけ大きな欠点があります。
肝心の法の編纂を行うところまで、話が進んでいないということです。2年以上更新されていないので、もう続きは来ないでしょうね......
右手に剣。左手に六法書。 ~こちら異世界法律事務所(相続問題専門)です~
作品情報
作者:七海
作品はこちらでご覧になれます。
なお、本作は連載中です。
あらすじ
異世界でも相続は厄介な問題です。王位承継問題、勇者や魔王の莫大な遺産をめぐる相続争い、伝説の武器、秘伝書、魔法書の承継者をめぐる争う等々……枚挙にいとまがありません。
テロに巻き込まれて死亡し、異世界に転生した司法修習生の日向葵は、ベイリー王国の第三王子メイソン・ベイリーとして生まれ変わっていた。前世の記憶と六法書を手にしていた彼は、立法議会で、日本の法律をそっくり真似た新法を次々に制定する。優秀な仕事ぶりに次期国王として期待されるが、他の王子たちとの後継者争いに巻き込まれて、命からがら王室を去ることに。
追手の目 を逃れるために、整形し、アオイ・ヒムカイと名前を変えた彼は、街中に相続問題専門の異世界法律事務所を設立。クライアントたちが抱える相続問題を一つ一つ解決していく。一方で、王国からの追手を撃退すべく、勇者が使った伝説の剣術を習得する。
ベースとなる法律は日本の民法です。民法などの法律知識がなくても読める分かりやすい読み物を心がけます。
レビュー
最後に紹介するのは、「右手に剣。左手に六法書。 ~こちら異世界法律事務所(相続問題専門)です~」。あらすじの通り、主人公は王子として転生し、日本法と同一の内容の法律を制定します。(民法について言えば、家裁などのシステムもそのままです)
後継者争いにより王室を去った王子は、法律事務所を開き、法と武力を用いてトラブルを解決していくことになります。本作では、「法律が力となる!コミュ障弁護士の異世界判決録」のように、法律の話と戦いがごっちゃになっているのではなく、不法に武力を用いる相手に武力で対抗するという感じですね。
読んだ印象としては、アクションと法律の話が良い具合に混ざりあっているなと感じました。また、なぜ日本法が適用できるのかについてもきちんと説明がなされていますし、舞台設定も良くできているかと思います。
ただし、本作はR15の作品で、突然エロ描写が出てきます。そういうのが苦手な方はご注意を。また、未完の作品で、中途半端なところで終わっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
法律を扱っている異世界なろう系小説はたくさんあるので、ぜひお気に入りの作品を見つけてください!