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映画「ファイトクラブ」感想:とにかくタイラーが最高な作品

作品情報

Fight Club (字幕版)

Fight Club (字幕版)

  • メディア: Prime Video

なお、本作は同名の小説の映画化です。

ファイト・クラブ〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ファイト・クラブ〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

評価

☆☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作は、僕がもっとも好きな映画作品の1つです。圧倒的なエンターテイメント性、物語の随所に挟まれるメッセージ、風刺。そのどれをとっても一級品の作品ですよね。そして、36歳という年齢を感じさせないブラッドピットが文句なしにかっこいいのも外せないポイントです。

本作のエンターテイメント性

 初見で見たときには、途中まで何が起きているのかよく分かりませんでした。様々な所で起きる主人公。徐々に拡大するファイトクラブ。繰り返される犯罪。妙な言葉ばかりを繰り返すモーラ。それが、主人公がタイラーと同一人物であることが分かった瞬間に、全てが繋がる爽快感がありました。

 改めて見返すと、主人公がタイラーと同一人物であるという伏線は随所に張られており、見事です。例えば、会社の上司が殴ったことを自作自演するシーン。そのシーンで主人公は、タイラーと初めて殴り合ったことを思い返しています。これは、当初から主人公は自作自演していたということを示唆していますよね。

 そんな本作の最大の鍵だった主人公とタイラーの同一人物性が明らかになっても、本作は失速しないのが凄いです。タイラーの計画を止めようと奔走する主人公。本来なら計画をコントロールできるタイラー=主人公でも事態は止められないものとなっており、それが本作の緊張感を最後まで高めていっています。

 ラストの主人公とタイラーの戦いも緊迫しています。少し見方を変えれば、単に自分自身を傷つけているだけなのに、それを意識させつつもハラハラさせる演出は、巧妙だと思いました。そしてラストシーン。自分を撃つことでタイラーを倒す。肉を切らせて骨を断つ。主人公自体も致命傷を負っているし、タイラーの計画を何も止められてはいないのですが、それでも映画を見終わった後に爽快感が残るのが不思議です。

本作のエンターテイメント性、風刺

 本作は、資本主義経済に対する風刺が凄いですよね。本来の主人公は、IKEAの家具を買い込み物質的側面ばかりを気にする人物。そんな主人公とタイラーは正反対です。物なんて持って何になる。色々な物を買うのに苦心している僕を嘲り笑うような強いメッセージを伝えています。

 そして、生きる実感を無くした人々。それを、闘いによって駆り立てる。今目の前にタイラーがいたら、目の前のパソコンをぶっ壊して、こんなのやってる場合じゃない、闘えとがなり立てるのでしょうか。確かに、死の恐怖、生の喜びは今の現代社会では感じにくくなっていますよね。それが良いことなのか悪いことなのか分かりませんが。

 社会の下層にいる人々の怒りというものも、うまく描ききっていますよね。そのような人々が猛り、滾り、エネルギーを爆発させる。街を破壊する。ビルをぶっ飛ばす。本作は同時多発テロ以前の作品ですが、その将来を予見しているかのようです。

 また、タイラーの死生観も面白いですよね。人はいつか死ぬ。当たり前だけれど、皆が目を背ける事実を首根っこ捕まえて引き摺り出し、タイラーは皆を焚きつけます。「明日死ぬと思って生きなさい、永遠に生きると思って学びなさい」と言ったのはガンジーですが、その前半部分を銃を突きつけながら拡声器を使って耳元でがなりたてるのがタイラーであり、ファイトクラブという映画であると思いました。

まとめ

 本作は、エンターテイメント作品としてだけでも1級品であるのに加えて、様々なメッセージや風刺、名言が合わさって、最高の作品に昇華されています。自分が停滞した時。生きる実感を無くした時。そんな時は、タイラー・ダーデンに会いに、またこの作品を見たくなりますね。

ファイト・クラブ〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ファイト・クラブ〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)