本やらなんやらの感想置き場

ネタバレ感想やらなんやらを気ままに書いています。

「RRR」感想:エンタメ欲張りセット

評価

☆☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

本作は、エンタメ欲張りセットと言いたくなるような作品だった。

Storyでの始まり。なるほど、本作の映画は娘を救いにいく映画なのだという分かりやすい立ち上がり。そこからのFIRE。ラーマVS大多数の有象無象。三國無双見ているかのような無双ぶり、やられてもやられても同胞を蹴散らし続けるラーマがやば過ぎた。そこから畳み掛けるようなWater。ラーマがビーム探しに立候補した段階で、本作は、ラーマがビームをどんどん追い詰めていくような作品で、ラーマがバーフバリでいうバラーラデーヴァの立ち位置なのかと思っていた。

と思えば、魚を取りに行った少年の近くで突然列車が爆発し、少年が取り残されてしまう。なんと自然な展開だろうか(棒)。そこで少年を救うために、その場でハンドサインをするラーマとビーム。初対面であるにも関わらず、息ぴったり。息もつかせぬ展開の後に、表示されるRRR。そこからの展開で、いきなりラーマとビームが仲良くなり過ぎてて少し笑ってしまった。インド映画らしい歌に包まれながら、私は何の映画を見せられているんだ?と思わざるを得ないカットの数々。ラーマを肩車しながらビームがスクワットするシーンとか、この映画がどこに向かっていくのか一ミリも予想できなかった。

この映画で一番好きだったのが、みんな大好きNattu Nattuのシーン。キレキレのダンスを突然見せつけられて、脳に楽しいという感情だけが注入された。これだよこれ、求めていたインド映画分はこれだよという感じ。脳がというより、心に直接くる楽しさ。自分でも踊ってみたくなる。この曲のクリップだけでも1時間ぐらいは余裕で見れそうだという面白さ。

そこから、ジェニーと仲良くなったりもありつつ、総督公邸に乗り込むという段階でビームの正体がラーマにバレてしまうことに。あーもうクライマックスかーと思いつつ、野生動物とともに総督公邸でバトルするシーンや、ラーマとビームの悲劇的かつ熱い戦いを見て、エンタメが爆発する良い作品だなと思ったら、全く何も終わっていなかったのに驚いた。そこで表示されるインターミッションの文字。上映時間が3時間というのはあらかじめ知っていたのだが、90分を3時間と勘違いさせるような圧倒的密度で面白かった。さすがバーフバリの監督である。

そこからのラーマの過去編。インド人なのに、やけに同胞やビームに手厳しいやっちゃな、どんだけ野心家なんだと思ってみていたら、悲しい経験に裏付けられた深い動機があったんですね、彼。納得できるバックグラウンドがあり、突然にラーマに感情移入できるようになってきた。その後、ビームをキリスト=救世主に見立てるような鞭打ちのシーン。ビームを吊り下げるところは明らかに十字架だし、有刺鉄線はイバラを表しているだろうし、こりゃ救世主のビームが死ぬ展開か、その後復活するのかと思って見ていたがそんなことはなかった。RRR時空に住んでいる人間は、皮膚を引き裂かれたり、小川がのように血を流すぐらいでは決して死なないのだろう。頑丈な人間である。

その後、ラーマの覚醒。ビームの歌が武器になるという話をしていて、なるほど、インドだからガンジーか、非暴力不服従かと思ったら、その後ラーマとビームがゴリゴリの暴力で問題を解決していっており笑ってしまった。いや、このくだり必要だったのか、という感じである。まあ、こういうブラフがあってからこそ、本作は先が読めずに面白かったのだろうが。

そして、ビームの処刑シーン。あんだけ血を流していたのだから弱体化するのかと思っていたら、全くそんなことはなかった。相変わらずRRR時空に住んでいる人間は頑丈である。ラーマは、途中木で貫かれたにも関わらず、後のシーンではピンピンしていた。ギャグ漫画レベルの回復の速さである。また、ラーマを刑務所から救い出した後、足が折れて動けないんだ〜だからビームの肩車でバトルするのか〜まあ分からなくもないな、と思ったらシヴァのコスプレし始めたラーマが普通に走ったりしていて笑ってしまった。本当に頑丈だなこの人間。最後のボスとの戦いは意外とあっさりだったものの、エンドロールのダンスが素敵だったので、あまり気にならなかった。

全体的に、バーフバリと同じくエンタメ欲張りセット、考えるな、感じろという作品だったと思う。ただ、バーフバリと比べていまいち乗り切れなかったのは、インドのナショナリスティックな感じが現れすぎていたからだろうか。インド内部で争うのではなく、外敵と協力して立ち向かえば、我ら兄弟は無敵だ。そういう思想がやや強かったようにも思い、歴代のインドの有名人の顔がやたらとフィーチャーされるエンドロールで少しだけ素面に戻ってしまった。全体的にはすごくエンタメで面白かったのだが。

hon-yara.com