本やらなんやらの感想置き場

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「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」感想:設定は良いものの。。。

評価等

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

原題:Everything Everywhere All at Once

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

通称エブエブとも呼ばれる本作は、設定はとても魅力的だったものの、物語がどんどん進んでいくにつれて失速し、結局最後はやはり(家族)愛で落ち着いてしまったのが少し残念な作品だった。つまらない作品とは言わないものの、もう少し頑張ってもらえれば傑作になったのにという思いが拭いきれなかった。賛否両論の作品だとは思うものの、私としては若干否側の作品かなという感じであり、なぜアカデミー賞で作品賞、脚本賞等、ここまで受賞ラッシュだったのかも理由がよくわかっていない(俳優陣の演技は確かに素晴らしかったが。)。

本作のわちゃわちゃした設定は好きだった。無数に分岐していくマルチバース。そこから並行世界の自分をダウンロードし、マトリックスばりに突然いろいろな能力を使うことができるようになる。エヴリンやウェイモンドのカンフーは、ジャッキーチェンの映画を思い出させるようで、胸が熱くなった。そして、エヴリンとジョイが、様々な宇宙で同時に戦い、言葉を交わしていく。これがどんな終わりとなるのか。想像もつかず、非常にわくわくした。

しかしながら、途中で下ネタが入ってきたあたりで雲行きが怪しくなってきたように思う。様々な宇宙の描写が繰り返されるものの、物語の本筋に必要か?というようなSMのシーンが入ったり、アライグマとの物語が進んで行ったり、ぬいぐるみと化したエブリンとジョイが戦ったりする。当然、どのような世界にいても、どのような選択をしても、「自分らしく生きる、希望を捨てずに前向きに生きるというのが大事なのだ。」というテーマにつながるということは分かるのだが、いかんせん数が多すぎた気がするし、これらがなかったとしても物語として十分成立していたと思う。

また、せっかくマルチバースで展開しているにも関わらず、別の並行世界があまり本筋に絡んでこなかったような気がする。女優となった世界線、サンドイッチマンとなった世界線など、そもそもジョイがでてこない。これらの世界線で、同時にエヴリンとジョイの物語が進んできて、最後に物語が解決すれば面白かったのだが。また、すべてをのっけた黒いベーグルに触れてダークサイドに落ちたジョイが愛によって救われたという展開にも、ご都合主義的な部分を感じてしまったのも事実である。

様々なオマージュがあって面白かった(特に、ホットドッグハンドを2001年宇宙の旅でオマージュしたシーンは爆笑ものだった。)。マトリックスの世界観にソーセージと食紅を7種類ほど闇鍋にぶち込んだような作品ということで勢いもあった。画面を分割して2つの世界を同時に描き出す等の映像表現は端的に、極めて面白かった。また、マルチバースの表現や、並行宇宙を同時に描きつつ動いていく展開も非常に斬新で、面白かった。だからこそ、設定やこれらの要素がうまくストーリーに組み合わさらなかったのがいまいちと感じてしまったポイントなのだろう。間違いなく見て良かったと思える作品だったが、釈然とした気持ちが拭いきれない一作でもあった。

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