映画「女神の見えざる手」感想

作品情報

女神の見えざる手（字幕版）

監督：ジョン・マッデン

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

　本作は、普通に面白い作品だった。しかしながら、傑作とまでは言えない作品だったように感じた。そう思った理由はいくつかある。

　１つは、主人公のエリザベス・スローンがあそこまで批判された理由が、そこまで分からなかったからだ。エリザベス・スローンが一番批判されていた箇所は、エズメの扱いだろう。エリザベスは、エズメが過去の銃乱射事件の被害者であることを勝手に公表し、その結果エズメは暴漢に襲われた。そのことについて、周りの人物はエリザベスを責め立てる。しかしながら、経歴を公表すること自体は事前に中華屋で（不十分ではあるが）話を通している。また、公表されたあと、エズメは襲撃を受けるまでは、それを受け入れて堂々と活動していた。そして、銃による襲撃については、完全に襲撃者側が悪く、公表した時点でエリザベスがそれを予見できたかというと、通常は難しいだろう。（アメリカにおいて銃規制反対論者に対して脅迫・死傷させることが当たり前であるならば話は別だが。）これらからすれば、確かにエリザベスの行為は非難に値するとは言え、あそこまで非難されるほどのものではなかったように思える。

　もう１つは、個々の議員たちが銃規制に賛成するようになった動機が分かりにくかったからだ。議員たちが法案の賛否を決めるのに、さしたる動機はないというのが本作のメッセージであると言えばそれまでだが、それにしても、いつの間にか法案の成立まであと一歩のとこまで来ていたという感が拭えない。また、ラストシーンで銃規制法案が通ったことが示唆されるが、結局なぜ法案が通ったかについては分からずじまいだったことも、少しもやったとした点である。

　ただし、ロビイストとはどういう仕事かという序盤の伏線を綺麗に回収していたところや、男娼が矜恃を持って白を切り通したシーン、そして何よりジェシカ・チャステインの卓越した演技など、印象的な部分も多々有った。そういう意味で、普通に面白い作品だったと感じた。