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映画「アイアムアヒーロー」感想:妄想、妄想、妄想。

作品情報

アイアムアヒーロー

アイアムアヒーロー

  • 発売日: 2016/11/02
  • メディア: Prime Video

監督:佐藤 信介

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 さえない主人公。平凡な日常の中、ゾンビが現れる。突然のことになすすべもない人類。ホームセンターに篭城する者たちも、結局仲間割れの末に自滅する。そんな過酷な状況の中でも、英雄は長澤まさみ有村架純と共に見事修羅場を乗り越え、一命を取り留めるのであった。To Be Continued。めでたしめでたしとまでは行かなくとも、ある種のハッピーエンドと言って良いだろう。あることに気づくまでは。

 あることとは、本作は全て英雄の妄想ではないかということだ。

 ゾンビの行動が科学法則に反しているだろうとか、ゾンビが動くだけのカロリーを確保できない以上ありえないなどと言いたい訳ではない。そんなことを言い始めたら、大概のフィクション作品は見れなくなってしまう。また、身近に長澤まさみ有村架純のような美人が現れる訳はないと言いたい訳でもない。

 本作が英雄の妄想だと思った根拠は3つある。まず、英雄には妄想癖がある。平凡な自分が最終的にリスペクトされるという妄想だ。この妄想は作中の中でシームレスに描かれる。本作は、ゾンビとの戦いを通じて平凡なはずの英雄が周りからの称賛を受けるという筋書きは、この英雄の妄想癖と合致する。

 次に、銃の弾をいくら使ってもなくならないことだ。前提として、銃の弾はベストに入っていたもののみであるから、それほど個数はなかったはずだ。また、本作は日本を舞台にした映画であるから銃弾は簡単には手に入らないし、英雄が物語の途中で弾丸を補給するシーンも描かれない。しかしながら、本作でかなりの個数の銃弾が消費される。特に最後のゾンビと闘うシーン。英雄は、あたり一面がゾンビの死体まみれになるほど銃を撃っていたから、本来ならば相当の数の弾を使っていたはずだ。しかしながら、最終的に銃弾は、ちょうど全てのゾンビを撃退するのに必要な個数だけ英雄の手元にあった。これだけの銃弾があのベストに入るものなのだろうか?

 そして、最後にして最後の根拠が、本作の登場人物の服装である。あまりに綺麗すぎるのだ。例えば、英雄たちは、山の中を富士山に向かって歩き出す。夜を越したシーンも見受けられるし、途中途中ではぬかるんだ山道などもあったはずだろう。地べたに座っているシーンもあった。しかしながら、ホームセンターのまでの道に現れた英雄の、そして特に早狩比呂美の服装は非常に清潔だった。蔓のように伸びた英雄の髭と、この服装の奇妙なアンバランスさが、全てが英雄の妄想であったという可能性を指し示す。

 これらの根拠があるからといって、本作が全て英雄の妄想だと断言できる訳ではない。しかしながら、ある種英雄に都合の良すぎる本作のストーリーは、脳裏にこの恐ろしい可能性をチラつかせる。このような恐ろしさも、ホラーとしての本作の魅力の一つであると感じた。