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石川伸一「料理と科学のおいしい出会い」感想

書評と感想

本書を読み終えて、最初に抱いた感想は、人間ってやはりご飯が大好きなんだなということの再確認だった。

今まで、料理×科学という分野について、あまり考えたことはなかった。料理と言えば、どちらかというと経験的なものであると思っていた。おいしいものを作るためには、良い料理を食べて経験し、何度も料理と失敗を繰り返して何とかうまくなっていく。このような、感覚的なアプローチをとる料理と、科学は、相性があまりよくないのではないかと思っていた。

しかしながら、料理と科学について論じる本書を読むと面白い。料理と科学は反するものではなく、むしろ相性が良いということが分かったからだ。例えば、科学的に良いだしをとる方法、お肉を焼いたときにでてくるメイラード反応。食の外延を広げるために、先人たちがいかに頑張ってきたか、いかにテクノロジーを応用してきたか。料理を食べるとき、脳は、神経はどう機能するのか。料理を数式で合わせてみたらどうなるのか。そのことを、一部でも味わえる本書は、とても興味深い書籍だと思った。

そして思うのが、人間って食事が大好きなんだという事実である。単に栄養を取るだけで済むのであれば、わざわざここまでいろいろと研究する必要はないだろう。毎日、卵かけご飯に納豆、ネギなりの野菜を追加して食べてしまえば、栄養素的には十分そうである。あるいは、カロリーメイトや完全食を延々と食べ続けるとか、そういった方法も可能そうだ。それにも関わらず、人は、食を楽しみ、分析し、分解し、実験し、研究し、技術を磨いて、芸術的な一皿を作り上げる。すぐに食べられてなくなってしまうにもかかわらずだ。そのような人間の情熱を間接的にも味わえるという意味でも、本書は面白い一冊であると思う。