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「華麗なるギャツビー」感想:良い空虚。

作品情報

監督:バズ・ラーマン

評価

☆☆☆(最高評価は☆5つ)

※以下は作品のネタバレを含むので、注意してください。

ネタバレ感想

 本作は、良い空虚というあだ名を付けたくなるような良い作品だった。本作では、大それたことが語られる訳ではない。143分(Wikipedia参照)という長い長大な上映時間にも関わらず、見終わった正直な感想としては、え、これで終わりなのというものだった。豪華絢爛・絢爛華麗・絢爛豪華といった衣装や演出の数々。それに対するストーリーは、結局のところダブル不倫をしていた男女カップルたちが神?による天罰?を受けてお互いの不倫相手が死に、元鞘に収まりました、収まるところに収まりました、ちゃんちゃんという形でなんだこれ、といった終わり方で空虚。

 確かに主人公のレオナルド・ディカプリオWikipedia参照)の華麗なるギャツビーな演技や男子校出身で女の子の目を見て喋れないような男の子のような演技は見ていて面白かったものの、本作の物語を踏まえてから改めて思い返すとそれだからなんだったんだという感じがしないでもない。ギャツビーが昔の思いを延々と引きずっていて、挙句の果てにアメリカに謎に城を立てて無意味かつ意味不明な規模のパーティーをやるというのも可哀想な感じしかしないし、過去を引きずりすぎて怖いなという感じもする。行動原理も空虚であれば住まいも空虚、職業も経歴も空虚空虚と空虚の大三元かよと突っ込みたくなるような中身だった。本作の物語が空虚な原因の半分くらいは、こいつの行動原理の空虚さにあるんじゃないのかという具合のハイハイ空虚空虚という感じ。

 また、キャリー・マリガンが演じる(Wikipedia参照)デイジーもデイジーでトムとギャツビーの間をフラフラするわ、どちらにも良いような顔を見せておいて勝手にギャツビーに入れ込んで勝手にギャツビーに失望して、それにも関わらずギャツビーを助手席に載せて車をかっ飛ばした挙句人を轢き殺してギャツビーに罪を擦りつけて夫に言われるがままに逃亡するというフラフラ具合。いやはやひどい。文字にするとなおさらひどい。本作の物語が空虚な原因の半分くらいは、こいつの行動原理の空虚さにあるんじゃないのかという具合のハイハイ空虚空虚という感じがした。

 トム(名前はWikipedia参照)もトムで器がでかいんだか小さいんだか分からないし、大人物なのかなんなのかも良く分からない。妻を許すような寛大なところを見せる一方で、妻にブチ切れたりそこまで美人とも思えない人妻に入れ込んだりしてなんやのワンワンワンという感じ。性欲の化身みたいな彼の性欲が人並みだったら、そもそも本作は始まりようがなかっただろう、本作は始まる前にデイジーと幸せに末長く暮らしましたちゃんちゃんめでたしめでたしとなっていたことを踏まえれば、本作の物語が空虚な原因の半分くらいは、こいつの行動原理の空虚さにあるんじゃないのかという具合のハイハイ空虚空虚という感じである。

 そして本作で最も空虚で可哀想だったのがニックだよニック。結局、彼はトムとギャツビーの間で勝手に板挟みの状況にされるわ、従姉妹に裏切られるわ、ギャツビーに声を掛けられたのもデイジーの従姉妹だからという理由にすぎないわ、ひたすらオロオロオロオロという感じで、なんというか虚無な立ち位置という感じである。絶対、本作の中で100回位ニックは死んだ魚のような死んだ目をしていたに違いない。結局のところ、ニックは本作の物語にいてもいなくてもまあ、そこまで重大な影響はさしてなかったのではないかと思うような立ち位置で、ドンマイという他ない。最終的になぜか精神病にかかってるし。なぜかというかデイジーのせい?ギャツビーの死とギャツビーの葬式に誰も来なかったことに傷ついて病んだ?まあ良く分からないけどドンマイ。来世には何か良いことあるかもしれないから期待しても良いかもしれないよなどと適当なことをメガホンと拡声器で嘯いてやりたいくらいに彼はついていない。本作の空虚な感じの23.5割くらいは彼から滲み出ているのだという具合のハイハイ空虚空虚という感じである。

 まあでも、こんな空虚な感じの物語があっても良いと思うんですよ。まさに空虚空虚言うばかりで長さだけは一丁前であるにも関わらず中身もないこのレビュー記事ですらネットの広大の海では存在を許される今日この頃の世の中であれば、空虚な人間達を描いた空虚についての物語はもっと世の中に存在してしかるべきだし、こういう物語はなんというか人間だよね、人生だよねという感じがして何か良いのである。

 本作そのものが、華麗で空虚で、本作のギャツビーっぽさに満ちている。